どうもサンポです。
僕はここ最近ワールドクリエイターとして活動しています。ワールドクリエイターというのは、メタバース空間の土地を活用して建物をたてたり、ゲームを作ったりする仕事です。
といってもワールドクリエイターという肩書が正しいのか不明なので、自称ワールドクリエイターという事になりますね。
そんなわけで今回は、ワールドクリエイターとして活動した結果見えてきた、メタバース系プラットフォームの違いや課題、ワールドクリエイターの将来性についてお話していこうと思います。
ちなみに僕が手を出したプラットフォームは『cluster』『The Sandbox』『Decentraland』の3つです。
▼ 前提知識共有
今回のメルマガの前提知識を共有しておきます。
cluster
The Sandbox
Decentraland
この当たりを知っておくと内容を理解しやすいかと思います。
✓clusterとは?
国産のメタバース系プラットフォームです。
3Dアバターを利用して、3次元のバーチャル空間にアクセスし、ユーザー同士のコミュニケーションやイベント開催などを行えます。
3次元のバーチャル空間はワールドと呼ばれており、自由に出入りができます。
さらに、Cluster Creator Kit と Unityを使うことで、自分だけのオリジナルワールドを作り、clusterのプラットフォーム上に公開することが可能です。
自分でワールドを作るもよし、誰かのワールドで遊ぶもよしのメタバースアプリです。
✓The Sandboxとは?
海外産のメタバース系プラットフォームです。
アバターやワールドの見た目はマインクラフトのようなボクセル調で、ゲームっぽい印象。
ユーザー体験として、土地の購入、ゲームで遊ぶ、アセット作成、ゲーム作成などが可能です。
アセット作成時やゲーム作成時には、The Sandboxが用意したツールを使うことで、誰でも手軽にクリエイター活動ができるようになっています。
直近では、スポーツ用品メーカーの『adidas』がSandboxの土地を買ったことで話題となりました。
しかし、まだまだ開発中のプラットフォームで、11月29日にようやくα版が登場予定です。
✓Decentralandとは?
海外産clusterというイメージ。
やれることはclusterとほぼ一緒ですが、clusterよりも高度なワールド作成が可能となっています。
誰でも手軽にワールドを作成可能なツールと、ガチ勢専用のツールが提供されており、ガチ勢専用ツールはプログラミング必須です。
本気で遊べるワールド作成の敷居は高いものの、プログラミングの自由度も高く今回紹介したプラットフォームの中では圧倒的にできる事が多いですね。
▼ 本題
では本題に入ります。
現時点で僕はワールドを3つ作成しました。
clusterで2つ、The Sandboxで1つです。Decentralandはツールを触って、出来る事を確かめた程度です。
ここで強調しておきたいことは、実際にワールドを作ることで見えてきたものが、かなりあったという事。
ワールド作成の基盤となるツールにどんな機能が用意されているのか。それを体験することによってそのプラットフォームが目指す場所や発生する需要などを垣間見た気がします。
ではそれぞれのメタバース系プラットフォームの特徴を列挙していきます。
✓clusterの特徴
ワールドの見た目は造りやすい
ギミックは必要最低限しかない
セミナーや雑談向き
ワールド内の長距離移動は基本ワープ
チャット、音声チャットは嬉しい
土地という概念が無く、誰でもワールドを公開可能
主戦場が国内なので市場は狭い
✓The Sandboxの特徴
圧倒的にゲーム向き
モデリング、ゲーム制作の敷居が低い
チャットはあるが音声チャットはまだない
大手企業が何社も参入
土地を持っていないとワールド作成不可(今だけ誰でも作成可能)
開発初期段階のため、今後に期待
✓Decentralandの特徴
clusterの上位互換、clusterでできることはほぼできる
NFT販売、他プラットフォームへのリンク可
LANDが地続きなので近隣LANDが干渉し合う
初心者でも簡単にシーン(ワールド)作成可能
上級者はプログラミングでシーン作成可能
シーン配置は所有している土地 or 運営が用意した土地ならOK
プログラムを書けるなら一番自由度が高い
✓クリエイター目線で自由度が高いプラットフォームは?
これら3つのプラットフォームの中で作れるものの自由度が一番高いのはDecentralandだと思いました。
理由は明白で、プログラミング可能な事が大きいです。
プログラミングさえ覚えてしまえば、ゲームもLAND内に作ることができます。しかもかなり本格的なゲームです。
しかし!そのプログラミング、かなり敷居が高いです。
正直素人が手を出して理解できるレベルを遥かに超えており、3Dゲームを一度も作ったことないという方が理解するのは厳しいでしょう。
そもそも公式が出しているドキュメントもプログラミングスキルがあること前提で書かれています。
変数、ポインタ、オブジェクト指向、インスタンス、コンポーネント、ベクトル、マトリクス…
これらの単語を聞いて?が浮かんだ方は、かなり苦労すると思います。
僕もプログラミング経験者ですが、オブジェクト指向を肌感覚で理解できたのはプログラム言語を勉強し始めてから5年後ぐらいだったかと。
まぁ僕は怠惰 & 頭がよくないので、早い人は1年とか3年で理解する人もいます。
なのでDecentralandのプログラミングに手を出そうと思っている方は、オブジェクト指向の言語を1年以上ガッツリ学んでから、手を出してみましょう。
ということで、Decentralandはクリエイターから観ると、自由度の高さと引き換えに、とんでもなく敷居も高くなってしまっているプラットフォームという印象です。
逆に言えば、遊ぶ専門のユーザーは自由度の高いワールドで遊べる事ができるので、メタバース体験の間口の広さは確保されています。
✓ ワールドを作りやすいプラットフォームは?
群を抜いてThe Sandboxでした。
ツールの操作の癖は強いものの、UIがしっかりと作り込まれているため、慣れてしまえばサクサク使えます。
それとブロック単位でLAND(マップ)が構成されているため、ワールドの設計が行いやすく、レゴブロックで遊ぶ感覚で建物やゲームを作ることができます。
なので、適当にブロックを足したり引いたりするだけでも様になってしまう。これがThe Sandboxのすごいところです。
ただ、clusterやDecentralandのように友達と気軽に集まってチャットをしたり、話したりという感じではなく、ゲームメインなところがあるので、コミュニケーションツールとしてはまだまだといった印象。
α版で進化の可能性をどこまで見せてくれるのか期待です。
✓メタバース事業で生まれてくる仕事予想
今回メタバース上にワールドを作ってみて感じたことを起点に、需要が生まれるであろう仕事を列挙します。
ワールドクリエイター
イベントクリエイター
ゲームクリエイター
アセットクリエイター
アバタークリエイター
ワールド設計士
デジタル建築士
メタバースインフルエンサー
メタバース土地コンサル
今思いつくものはこれぐらいでしょうか。結構な数がありますね。
で、何をきっかけにこれらを思いついたかというと、ワールドを作成するための準備段階での経験がきっかけです。
というのもワールドを作るぞ!と思っても、すぐに作れるものでもないんですよね。最低でも以下のことは考えておかないとお話にならないかと思います。
ワールドを配置するための土地取得(購入、貸借)
ワールドを作るための環境構築
ワールド設計
配置する建築物設計
配置するアセットの選定
使用するアバターの選定
ギミック設計
作成後の広告、マーケティング
考えることがありすぎて頭パンクしそうでした…
1人で出来ないこともないですが、それぞれのスキルが微妙に嚙み合わない感覚があったんですよね。
どんどん手を進めて物を配置していきたい欲求を抱えつつも、それぞれのアセットやギミックが干渉し合わないように設計していかなければいけないとか。世界観を統一するために1時間ぐらいアセットを探しまわったりなど。
圧倒的に非効率な製作になるかと思います。というか なりました。
もしワールド製作を仕事として行うのであれば、分業できるところはしっかりと分けた方が効率がいいと感じました。
特に、ワールド設計、アセット調達、ワールド構築の最低3業種は欲しいところです。
さらにはThe Sandboxなどの土地販売型のメタバースの場合、土地所有者(地主)が土地の活用方法を見出せず、途方に暮れるなんてことも容易に想像できます。
だって土地にワールド作るのめっちゃ大変ですからね。
土地を貸し出すとしても、借り手が現れるか疑問です。
そうなったら土地の投げ売りなんてことも起きかねないですよね。
これらのことを見越して、ワールド作成スキルを身につけておけば結構需要があるのではないでしょうか。
実際、イケハヤさんが運営するNinjaDAOにはSandboxの土地を買ったはいいが、使い方がわからん!という方々が結構集まっています。
このような観点から、ワールドクリエイト周りの職種は、これからメタバースの認知と市場が拡大するにあたって需要が増加するはずです。
✓結局どのプラットフォームが伸びると思う?
正直分かりませんが、あえて一つに絞るとしたら、僕はThe Sandboxが一番伸びる(市場拡大する)と思っています。
理由としては、The Sandboxはクリエイターエコノミーの構築に力を入れているプラットフォームだからです。
アセットやゲームを作るクリエイターへの利益還元の設計はもちろんのこと、クリエイターファンドという制度もしっかりと機能しています。
クリエイターファンドというのは、アセットを制作したクリエイターに対し、10ドル~1000ドルの支援金を支給するという制度です。
これらの仕組みは、ユーザーへ良質な体験を提供するためには、クリエイターの存在が無くてはならないと考えた結果のものだと考えられます。
この思想はクリエイターからすると魅力的で、活動のための資金とエネルギーとなります。そもそも活動資金が得られないプラットフォームではアセットやワールドを作る気力を保つのが困難ですから。
そして、クリエイターが集まるプラットフォームは必然的にユーザー体験も増えていき、成長していきます。
YouTubeやTikTokが世界最大の動画配信サービスとなったように、クリエイターとユーザーが同時に集まるプラットフォームの伸び代は凄まじいものがあると思います。
こういった観点から、ユーザー体験構築のための基盤をしっかりと固めつつある『The Sandbox』に優位性があると判断しました。
✓クリエイター目線でclusterは望み薄なのか?
結論、全くそんなことないと思っています。
世界で標準になるとか、稼ぎやすいプラットフォームになるとは言えないですが、国内のワールドクリエイター市場を底上げしてくれる存在になるかなと期待しています。
というのもThe SandboxやDecentralandって、仮想通貨と切っても切れない関係性があるんですよね。そうなると日本人の未成年クリエイターは国内からのアクセスが規制される可能性があります。
その点clusterは今のところ、仮想通貨やブロックチェーンとは無縁の場所に位置しており、誰でも気兼ねなくワールドを作ることが可能です。
僕の予想だとThe SandboxやDecentralandのようなDappsは、スケール感としてYouTube、clusterはニコニコ動画よりの立ち位置になるかと思っています。
今現在、動画共有プラットフォームといえばYouTube!というイメージがありますが、日本では一時期、ニコニコ動画とYouTubeが張り合っている時期がありました。
2011年頃だったでしょうか?なつかしいですね。
で、ニコニコ動画の特徴、利点というのが、ユーザーが作品を補完してくれる可能性があるという点です。
ニコニコ動画で共有される動画には、ユーザーが直接コメントを描き込むことができ、描き込まれたコメントは動画にオーバーラップする形で表示されます。
そのコメント機能のおかげで、つまらなかった動画が劇的に面白くなってしまうなんてことも多々ありました。ひとりで動画を観ているだけだと気づかない視点や、突拍子もないコメントなどが流れてくると興奮したものです。
コメント職人やタグ職人なんて呼ばれる人たちもいます。
皆さんバルス祭りってご存じですか?
スタジオジブリ作品『天空の城ラピュタ』でシータとパズーが最後に唱える呪文がありまして、それを『バルス』といいます。
ニコニコ動画ではラピュタが地上波放映される時、よくバルス祭りが開催されていました。
地上波のバルスシーンが流れるタイミングで、ニコニコ動画上でユーザーが一斉に「バルス!」とコメントを打ち込みます。
回線が落ちた!とか落ちなかった!とかいうニッチな遊びを楽しむ祭りです。
clusterはこういった、ニッチな遊び場になるのではないかと考えています。
国内のゲーム実況配信も、もともとはニコニコ動画が起爆地点だった気がします。YouTubeの方が稼げるとわかった配信者がジワジワとYouTubeに流れていったんですよね。
あとはボカロもニコニコ動画が起爆地点です。
無料で気兼ねなくクリエイター活動ができ、ユーザーも作品を補完してくれるという関係性がニコニコ動画にはありました。
clusterはこの位置を奪い取るべきだと僕は思っています。
他者が作ったワールドに自分が来訪した痕跡を残せるシステムや、clusterバルス祭り、cluster内でのアニメや映画観賞会など。
対面でチャットしたり、会話したりなどの同期的なコミュニケーションに限らず、ニコニコ動画のコメントのような非同期的なコミュニケーションも充実させて欲しいですね。
日本人の気質としては非同期コミュニケーションが合っている気がします。
こういった仕組みやイベントを定期的に盛り込めるようになったらclusterは息の長いプラットフォームになるのではないでしょうか。
▼ ビジネスチャンスはそこら中に転がっている
ここ2週間ほどワールドクリエイターとして活動してきた中で一番強く思ったことは、ビジネスチャンスはそこら中に転がっているという事でした。
実際にワールドを作って公開している人間があまりにも少ない。それは当然で、ワールドを作るための情報が全然足りていません。
そもそもメタバース市場は、日本で立ち上がってすらいない印象です。
市場のないところにコミットし続けることは正直不安ではありますが、ワールドを作って公開するという活動は学びが多く勉強になります。
これから技術の進歩とともに、メタバース市場は確実に日本でも広がるはずです。
物理的なモノの価値の高騰や希薄化、消費社会による環境問題の増加、コロナウイルスの猛威。
こういった社会問題が、人々をメタバースないしはデジタル空間へ後押ししているような気さえしてしまいます。
物理世界での消費が敬遠されつつあり、メタバース経済圏や移住への注目度はかなり上がっています。物理世界では衣食住の必要最低限を確保し、経済活動、娯楽、ファッションなどはメタバースに移行するなんて世界もあり得なくはないと思います。
当然課題は山積みですが…
しかし、誰も予測できない領域だからこその楽しさは格別です。
誰も探検したことのない洞窟を突き進んでいるようなワクワク感。ゲームで隠しアイテムや隠しダンジョンを発見するような感覚に近いものがあります。
なので、僕はこの終わりのないゲームをこれからも攻略していこうと思います。
皆さんもぜひ、この未開の土地を開拓してみてください!
それではまた来週。