どうもサンポです。
今回は、BCG(ブロックチェーンゲーム)の登場がゲーム業界を変革し、それによってゲームデベロッパーが絶大な力を持つ時代が始まるのではないか、というお話です。
本メルマガを読んでいただくことで、既存のゲーム業界の仕組み、今起きているゲーム業界の変化、BCGのどういった部分が業界を破壊していくのか、そして生き残るBCGはどうやって見分けていけばいいのか、等の知見が得られるかと思います。
僕はもともとゲーム業界出身なので、実際に働いて得た経験と絡めて解説もできそうです。
▼既存のゲーム業界
まずは前提知識として知っておいてもらいたい、既存のゲーム業界情報を共有していきます。コンシューマーとソーシャルの棲み分け、デベロッパーとパブリッシャーの関係、ゲーム製作の流れ、この辺りをメインに解説していきます。
✓コンシューマーゲームとソーシャルゲーム
まず、ゲームはざっくりとコンシューマーゲームとソーシャルゲームにわけられます。
コンシューマーゲームというのはPS5やSwitchなどの家庭用ゲーム機で遊ぶゲーム全般を指し、ソーシャルゲームというのはスマホアプリとしてGoogleStoreやAppStoreでダウンロードできるものを指します。
例えば、ドラクエやFF等のナンバリングタイトルはコンシューマーゲーム。パズドラやモンスト、FGOなどはソーシャルゲームという区分けです。
✓デベロッパーとパブリッシャーの関係
ゲーム業界では主に、ゲーム開発に特化した会社と、流通・マーケティングに特化した会社がそれぞれ協力して1つのゲームを作る場合が多いです。
そしてゲーム開発に特化した会社を『デベロッパー(ディベロッパー)』、流通・マーケティングに特化した会社を『パブリッシャー』と呼び分けています。しかし、ほとんどのパブリッシャーは自社でゲーム開発機能も備えています。
と、文字だけの説明ではチンプンカンプンだと思うので、具体的な会社名を当てはめた表をご覧ください。
恐らくパブリッシャーの名前は聞いたことあるけど、デベロッパーの名前はあまり聞いたことないという人が多いのではないでしょうか。
ゲームの場合、CMやパッケージにデカデカとロゴや名前が刻まれるのはパブリッシャーが多い為、ゲーム業界外の人にデベロッパーの社名が届くことは少ないでしょう。
✓ゲーム製作の流れ
スマホやソーシャルゲームの登場によりゲーム製作の流れは多様化しています。
パブリッシャーが専属のデベロッパーに制作依頼をしたり、複数デベロッパーの中からコンペで決めたり、デベロッパー側からパブリッシャーに企画を持ち込んで開発が始まるということもあります。そして完成したゲームはパブリッシャーが販売、流通し利益を分け合います。
他にも、GoogleStoreやAppStore、Steam、EpicGamesStoreなどのゲーム販売プラットフォームを利用してデベロッパー主導で、ゲーム開発から販促までを行うこともあります。
超余談ですが『製作』と『制作』はあえて漢字を使い分けています。製を使う場合は開発初期の企画段階~販売までのすべての工程を含めた意味。制の場合はゲームの中身を作り込んでいく、いわばゲーム作りの工程を指す際に使っています。
ややこしやー
▼デベロッパー時代が始まる
ではここから本題の、なぜデベロッパーの時代がやってくるのかについて理由を述べていきたいと思います。
理由は以下の要素あると思っていて
① パブリッシャーの機能をユーザーが補完してくれる
② 大手パブリッシャーがNFT参入に手こずっている
この2つです。
✓① パブリッシャーの機能をユーザーが補完してくれる
現在パブリッシャーが担っている機能としては開発費援助、流通、広告マーケティングなどが主です。が、これらの機能はBCGの場合、プラットフォームやユーザーに頼ることで代用できてしまうんですね。
開発・流通はイーサリアム、Flow、Solanaなどのブロックチェーンプラットフォームを利用し、開発費に関してはトークンセールやNFTセールによって集める事が可能です。
そして広告・マーケティングに関してはユーザーが自分たちの意思で勝手に行ってくれます。なぜならトークンやNFTの価値はユーザーがそのゲームに集まれば集まるほど需要が高くなるという、インセンティブ構造になっているからです。そのためトークンを持っているユーザー(ステークホルダー)がトークン価値を高めるために、SNSや口コミで自主的にゲームを宣伝するという現象が起こります。
ブログやSNSでアフィリエイトを行ったことがある人は理解しやすいと思います。アフィリエイトの場合、商品を紹介して誰かが購入してくれたら、売り上げの数%が紹介者に振り込まれる、というインセンティブ設計が施されています。
だから商品を紹介する動機とモチベーションが自発的に生まれてくるわけなんですね。それと似たような話です。
このように今までパブリッシャーが行ってきた主要な業務が、ブロックチェーン、トークン、NFTの登場によって代用可能になりました。
プラス、パブリッシャーを仲介してのゲーム販売だと数十%のロイヤリティの支払いが発生するので、ロイヤリティを限りなく小さくできるのもBCGの利点になります。
✓② 大手パブリッシャーがNFT参入に手こずっている
先日アサシンクリードシリーズで有名なUbisoftが『Ubisoft Quartz』という、NFTアイテムを売買できるサービスをβスタートしました。まずは既存のゲーム『Ghost Recon:Breakpoint』で提供予定だそうです。※詳細はこちら
しかしゲーマーからの評価は厳しく、トレイラー動画には何万もの低評価が付き、低評価の割合は約96%。ゲーマーからの大きな反発をくらいました。
サービス自体が無くなることはなさそうですが、すでにリリースされているゲームに追加でNFTを絡めていくという手法はゲーマーに不快感をあたえているため、普及には時間がかかりそうです。
大手パブリッシャーかつ世界的に有名なタイトルをいくつも保持しているUbisoftだからこそ起きた事件とも言えますね。
このことから察するに、コミュニティ形成が、ある程度完成してしまっているゲーム、特に課金体質ではないコンシューマーゲームにNFTやトークンを絡めることは、コミュニティ崩壊につながりかねないです。
ゲーム業界はe-Sports、実況、RTAなどゲーマー主導のコミュニティと共に成長してきた産業でもあるため、コミュニティの崩壊はすなわちその会社の死を意味しています。
大手パブリッシャーはある意味では、コミュニティを育て、そのコミュニティに製品を買ってもらうことによって業界を拡大させてきたわけですからコミュニティの意見を軽視することはできません。
そう考えると、NFTやトークンを絡めたBCGを作る際には、一からコミュニティ形成をしたほうが近道になる可能性があります。これはゲーム開発に特化したデベロッパーに大きなチャンスがあるということを意味しています。
▼BCGの問題点
BCGはデベロッパー主導での開発に向いており、利益も生みやすいという話をしてきましたが、やはりBCGには厄介な問題もはらんでおります。
モチベーションの喪失
トークン設計の難しさ
それぞれ解説していきます。
✓ モチベーションの喪失
BCGプロジェクトは、トークンセールによって開発初期の段階から潤沢な資金を集めることができてしまうため、その時点でゲーム開発のモチベーションが消え失せてしまう可能性もなくはないです。
例えばBCGゲーム開発を「お金儲け」のために始めたとすると、トークンセールが成功した段階ですでに、お金を儲けるという目標を達成してしまうんです。ゲーム制作で一番お金がかかるのは人件費です。基本ゲーム制作は何年も開発、運営を続けるので、スタッフに支払う給料は積み重なり、制作費が数億~数十億になるなんてことはザラです。
ここで合理的な人間は誰しもが思うんですね。
利益がでるか不明確なゲーム開発に何億もかけるより、トークンセールで得た資金をそのままもらった方が利益出るんじゃね?と。
そう思わないまでもNFTセールを繰り返すことで、さらに開発資金を集められてしまうため、ゲーム制作に緊張感が生まれづらくなり、開発が進まないなんてことも起きていると思います。
恐らくこれを読んでいる方の中に、そういうゲームに投資しているって人もいるのではないでしょうか…
結局何が言いたかったかというと、開発資金があるからと言っていいゲームが生まれてくるとは限らないという事です。
もし、気になるBCGを見つけたらゲームが面白そうかどうかはもちろんのこと、開発陣営がどれほどゲーム作りに熱狂しているか、ゲーム作りに対する思いが溢れているかを見極めることが大切ですね。
ゲーム制作で一番必要なものは何かと聞かれたら僕は迷わずこう答えます。「ゲームを作りたいと思う欲求」だと。
✓ トークン設計の難しさ
BCG開発で最も面白くて、最も困難なものがトークン設計だと思います。トークン設計を簡単に説明すると、ゲーム内の経済バランスを安定させるための仕組みづくりです。
ゲームで使われるトークンは、現実世界でのお金、例えば日本円なんかと同じ役割を持つようになります。日本円を大量に発行すると日本円の価値が下がり物価が上がるように、トークンを大量に発行するだけだとトークン価値を下げてしまいます。
そのため、トークンの供給量を操作し、需要と供給のバランスを常に保ち続けるトークン設計は激ムズです。素人が直感でシステムを開発しようものならゲーム内経済は容易に崩壊するでしょう。
BCGのキングであるAxieInfinityはトークン設計のためにエコノミストを雇っているらしいです。そしてこういった、ゲーム開発会社がエコノミストを雇うという事例は増えてきており、開発初期からゲーム開発に参加するようです。
※参照:Off Topic #91 Web3とインターネットの進化
なので今後、デベロッパーがエコノミストを採用していく流れが加速し、エコノミスト需要はうなぎのぼりになることが予想できます。
みんなー経済学まなぼー
▼まとめ
BCGにはトークン設計という難問を孕んでいますが、既にゲーム開発ノウハウと環境を持っているデベロッパーには大きなチャンスが到来しています。もちろん、ゼロから少人数体制で挑むデベロッパーにもチャンスは巡ってきています。
ただ僕が思うに、すでに1000以上ものプロジェクトが走っている中で生き残るBCGを作るのは、長年コンシューマーゲームやソーシャルゲーム開発を行ってきた会社の方が有利だと思います。
先ほど挙げた問題点もそうですが、ゲーム作りの環境とノウハウは一朝一夕でどうこうなるものではありません。ゲームが盛り上がるためにはゲーマーコミュニティが重要なように、ゲーム開発もまた、開発者コミュニティの強さが重要になります。
だから僕は、日本の優秀なデベロッパーから世界一のBCGが登場することを願っています。
大手パブリッシャー、老舗デベロッパー、BCGネイティブのデベロッパー、これら3つの勢力が今後どう業界を盛り上げてくれるのか、本当に面白い時代になってきましたね!